今年3月、日本におけるF-4EJファントムⅡの運用が終了した。
50年の長きに渡り、米ソ冷戦の最も激しい時期、主たる防空任務に従事した機体である。
その生い立ちは、米海軍の艦載戦闘機として開発され1960年から、実戦配備された。
余裕のある大きさの機体に、当時最強であったジェネラル・エレクトリックJ79エンジン、推力7tの双発、主翼と胴体で、大きな底面が確保されることで、各種ミサイル、爆弾等を多数、搭載できる、多用途戦闘機となった。
大きな機体を利用して、大型のレーダーや電子機器を搭載し、複座ということもあり、完全な全天候性能を有していた。
また、海軍の機体は、ガンを持たず、純粋なミサイリアーであった。(但し、胴体中央に、20mmバルカン砲ポッド搭載可能)
この高性能に目を付けたのが、米空軍で、機首下部に20mmバルカン砲を固定装備して、F-4Eとして採用した。
ファントムは、多くの西側諸国にも採用され、合計生産数は、5,129機で、これは、西側では、F-16に次ぐ生産数であった。
さて、航空自衛隊のマクダネル・ダグラス(現在のボーイング)F-4EJファントムⅡは、初号機である301号機は、米国で組み立てられ、太平洋を渡って日本に空輸された。1971年のことである。
ファントムの最後の部隊は、各務原の、飛行開発実験団の部隊で、珍しい複座の超音速機として、主に超音速飛行試験のチェイサーとして、活躍した。
航空自衛隊に最後に納入された、440号機は、同時に、世界のファントムの最終号機でもあった。
現在の最新のステルス戦闘機から見れば、古さが目立つが、筋の良いスマートさも見られる。
ファントムは、米海軍のブルーエンジェルス、及び米空軍のサンダーバーバーズの使用機にもなった。
大型機ではあるが、大出力のエンジンと、大きな主翼のお陰で、優れた運動性を買われたのだ。
大きな主翼での密集編隊は、迫力があった。
ファントムは、30-40代で、圧倒的な人気があるようだ。それは、新谷かおる、の、マンガ「ファントム無頼」によるところも大きかったと思われる。私も愛読した。
しかし、その最大の理由は、50年という、運用年数の長さであろう。
ファントムの後継機は、空軍がF-15イーグルで、ファントムと同じく、当時はマクダネル・ダグラス社によるもので、ファントム同様、余裕のある機体設計のお陰で、内部搭載機器の更新や、攻撃能力を大幅に向上させたF-15Eストライクイーグルも、配備された。
米空軍以外に、日本、サウジアラビア、韓国、イスラエルで採用されている。
また、ボーイングでは、2040年まで運用することを提案している。
一方、海軍は、トップ・ガンでお馴染みの、グラマンF-14トムキャットだが、こちらも複座であるが、機体価格や、大きさの制約から、米海軍以外では、イランが採用したに止まり、2004年には、米海軍では、全機退役している。
ファントムは、航空機史上、間違いなく、エポックメーキングな機体となるが、1960年の運用開始から、61年になり、2021年時点でも、ギリシャ、韓国、エジプト、イラン、トルコの5ヵ国で運用中という、驚嘆すべき寿命を誇る。
これも、優れた基本設計と、J79という、類い稀な傑作エンジンのお陰であろう。
傑作機には、傑作エンジンあり、の典型的な例である。
今後も、前述5ヵ国での活躍を祈念する。
グリッペン
私の徒然です。
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